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あさひこ幼稚園の毎日

あさひこ幼稚園のブログです。毎日更新、園の日常をお知らせします。

スポーツではなく、保育としての、「運動会」

 
いよいよ明日は運動会です。

あさひこ幼稚園の運動会は、「大人に見せるためのよく練習された芸」を見せる場ではなく、どの学年も、その年齢の育ちにあった活動をみんなで楽しむ行事です。
それを経ることで、子どもたちが育っていくための行事です。
ですので、ある意味…地味です!
派手さはありません!

でも、とてもいい笑顔、いい表情に、たくさん出会えることと思います。
保護者の皆さんは、楽しみにしていてください!

そんな運動会の大トリは、年長「バトンタッチリレー」です。
ひとクラス約30人が、赤白2つのチームになり、3クラス対抗、赤チーム白チームの2回戦を行う競争です。

このリレーの活動については、今までも連日のようにブログでふれてきました。
まだ読まれていない方は、ぜひ読んでください。

リレーは、年長の子どもたちが体いっぱい、心いっぱい、真剣な気持ちで、全力で走ることと思います。
見て損はないと思いますので、年少・年中の保護者の方もぜひご覧いただき、大きな声援を送っていただけたら嬉しく思います。
そして、「自分の子も、来年(再来年)、ああやって走るんだ」と想像していただけたら。

そんなリレーですが、前述のとおり、地味で、でも子どもが育つために考え抜かれた、あさひこの運動会です。
その中身の、大切なところも、少し、わかりにくいことがあると自覚しています。
ですので、本番でご覧になる前に、少しだけ、「その保育としての意味」をここで書かせていただきたいと思います。
長文ですが、どうかお読みいただけたらと思います。

まず、これが一番大切なことなのですが、幼稚園で行われている活動は、スポーツではない、ということなのです。
保育なのです。
だからきっと、たとえば、自分のこどもが中高生で、その部活の試合を見に行くときとは、少し違う見方が必要なのだと思っています。

リレーで、みんなが向かうのは、もちろん、「1番」です。
それは、スポーツと同じです。
もちろん、1番は、うれしい。1番は、きもちいい。
3番は、くやしい。3番は、いやだ。

1番になりたいから、勝ちたいから、がんばる。
それはとても大切なことです。
はじめから、1番でも3番でもいい、では、その活動の中で、心動かすことはできません。
大きく育つことはできません。

しかし、その終着は、「1番だったからよかった」「3番だったからダメだった」という、単純な「勝ち負けの価値観」であってほしくないと考えています。

1番になりたいから、勝ちたいから、がんばる。
じゃ、誰ががんばるのか?
「誰か」じゃない。「みんな」です。
今まで一緒にいっぱい生活して、いっぱい遊んで、こいのぼりをつくって、お泊まり保育をして、ドッヂボール対決をした、楽しんだ、そんな大好きな、クラスの「みんな」です。

そんなみんなで、1番を目指します。
みんなで勝ちたい。

「みんな」には。
足が遅い子もいます。
集中力が続かない子もいます。
言葉にできない子もいます。
話を聞けない子もいます。
恥ずかしがりやも、素直に思いを出せない子も、いろんな子がいます。

そんな「みんな」で、考えて、刺激しあって、意見して、ぶつかりもして、
分かりあって、喜びあって、高めあって、泣いて、笑って、一番を目指します。

そんな活動を通して、頭も体も心もいっぱい使って、そして、育つこと。育ちあうこと。

それが、保育であることの目的です。

だから、どうか保護者の皆さん。
お子さんが、クラスが、誰かが、「何位だったか」で、評価をしないでください。
誰かや、他のクラスや、過去の年長や、他者と比較して評価をしないでください。
もちろん、年長の保護者であれば、自分のお子さんのチームに、勝ってほしいでしょう。
だって、自分の子どもの、嬉しい顔が見たいから。喜ぶ顔が見たいから。
でも、そこで評価はしないでください。勝っても、負けても。

もし一番であったなら、もちろん、共に喜んでください。分かち合ってください。
そして一番大事なことを伝えてください。
「一番だったことも嬉しいけど、それ以上に、あなたが真剣に、全力で、本気でがんばったことが一番嬉しい。あなたは最高で、大きくなった、それが嬉しい」
ということを伝えてください。
「一番だったから」という理由で、ご褒美をあげないでください。
なにかご褒美をあげるなら、「順位ではなく、あなたの頑張り」に対して、にしてください。
しかし、「がんばって、一番になった」という純粋な喜びを、「ものがもらえた」という喜びに変換させてしまわないよう、注意してください。

三番であったなら、もちろん、共に悔しがってもいいし、子どもの気持ちを受け止めてあげてください。
でも、一番大切なことを伝えてください。
「三番だったことは悔しいと思う、けど、それ以上に、あなたが真剣に、全力で、本気でがんばったことは、とても素敵だった。あなたは最高で、大きくなった、それが嬉しい」
ということを伝えてください。

「あなたは最高だ」ということを。

勝っても負けても…
「一番」を、必死で目指したからこそ得ることのできる、「順位なんて関係ない価値」。
その育ちを共に喜んでください。

大胆に言えば、今の段階で、順位は、何番であっても、その価値を変えません。
今の段階だから、そうなのです。

一ヶ月前からは考えられません。
今年の年長は、「いやだ」「やりたくない」という子がたくさんいるところからのスタートでした。
「自分は関係ない」「恥ずかしい」「負けるのが嫌だから」「応援されるのが嫌だから」「やりたくない」
そういった子がたくさんいる、その大きな課題がありました。
やる気の子も、ひとりひとり「自分」のことばかりで、周囲の子になかなか目が向けられなかった。
みんなでやるバトンタッチリレーを「楽しいじゃん」と感じられるまでの課題が、とても大きかった。
そこから、少しずつ課題を乗り越え、達成感を感じ、友達と交わり、少しずつ少しずつ、「みんなで」「勝ちたい」になっていきました。
そして、見違えるように変わっていきました。
その子どもたち一人ひとりの育ちは、とても大きいものでした。
明日は、どうか親子で、その育ちそのものを共に喜び合う、そんな日になったら、と思います。

また、これは蛇足かもしれませんが、バトンタッチリレーには、細かいルールが存在しません。
「同じ人数で、バトンを最後までつなぎ、アンカーがゴールラインに早くゴールしたチームから勝ち」
というだけです。
たとえば、「ひとり少ないクラスはどうするのか?」「休みの子が出たらどうするのか?」「もし白線の内側に入って走った場合はどうなるのか?」ということは、もともと、決まっていません。
それは、先生たちでも話し合いますが、原則、その年の子どもが決めます。
それもまた、スポーツとはまったく違うところです。
なぜ決まっていないのか、というと、「そういうことが起こったときに、『じゃあどうするのか?』を自分たちで話し合って考えて決めること」が保育をするうえでは大切なことだからです。
なにかに気づき、課題が見つかれば、先生は、「どうしたらいいと思う?」と問いかけます。話し合い、決定します。
そこで決まったことが、その年のルールです。

また、ルールについては、毎年、子どもが自分たちで決める以外、決めようがないとも言えます。
保育として、選抜チームではなく、全員参加でリレーをやる以上、その年によって、たとえば、障害を持つ子がいるときもあります。走ることができない子がいるときもあります。そのとき、「じゃあ、どうする?」ということが、「ルール」によって決められてしまうのであれば、それは「みんなで育ちあうための保育」ではないからです。
バトンタッチリレーが保育である以上、ルールは、「なんでもあり(考えうる限り最大に柔軟に)」が前提です。

(そもそも今年度でも、このリレーが始まった当初は、人数すら一定ではありませんでした。誰がゴールしたら決着なのかも決まっていませんでした。順位すらありませんでした。みんなトラックに並んでいたし、並んでいる人にぶつかりながら走っていました。そこからのスタートです)

ちなみに今年は、人数の少ないクラスのチームは、「誰かが2回走る」と決まり、「じゃあ、どんな人に走ってもらいたいか?」を話し合いました。足が速いことももちろんありますが、単純にそれだけではなく、リレーにかける思いや姿から、この子なら!と、決まりました。
他のクラスでも、もし欠席の子がいたら、同じように決めるでしょう。
そのことに、今年は「(速い子が2回走って)ずるい!」という他のチームからの声はありません。
そんなことより、「そんな相手にどう勝つか」を課題にしています。
(過去には「その決め方だと不公平だ」ということが課題となり、「2回走る子はその場でくじで決める」となった年もあります。それはその年の子だったからこその課題です)
もちろん、「足が遅い子が欠席だったから、今日は速い子が2回走れてラッキー」というような発想もありません。
子どもたちにとって、リレーとはそういうものではないからです。

白線の内側に入ってはいけない、ということは何回も課題になりました。
抜かしたいあまりに、線の内側に入ってしまうのです。
先生たちも、「線の各所にコーンを置くか?」ということを議論しました。
でも、「自分たちで気づけて、課題にしてほしい。そして直せるはずだ」との思いから、あえてコーンは置きませんでした。
結果、今はほぼ線の内側に入ることはありません。線を守っています。
だから、子どもたちからも「もし内側に入ったら失格」というようなルールは提案されませんでした。
(厳密に失格となった年も、コーンを置くことになった年もあります)

だから、そういったルールについては、今年の子どもたちを尊重したいと思います。
本番というのは、なにが起こるかわかりません。誰が2回走るか。もし白線の内側に入ってしまったら。ひょっとして、大人の目から見ると、「ずるい!」と言いたくなる様な事も起こりえないとは限りません。
でも、そういうことは、たとえ我が子のためだとしても、口にされないでください。
それを周囲の大人が口にしてしまうのは、わが子を含めた今年の子どもたちを、傷つけることになってしまうのです。
どうか、子どもたちで決めたこと、その思いを尊重していただけるよう、お願いします。

最後になりますが…
僕は、「勝ち組」とか「負け組」とかいう言葉がきらいです。
それは、「本気で生きること」そのもの、結果ではない「行いそのもの」の熱を、価値を、知らない人間が作った言葉だと思っています。

あさひこ幼稚園では、自己肯定感を育むことを大切にしています。
「自分って最高!」
子どもたちには、富、名声、社会的地位、そういう他者との比較でしか感じられない相対的な幸せ、不幸せではなく、絶対的に「自分って最高!」、そういう感性を持ち、それをもとにおおらかに人と関わり、自由に生きていける、そんな幸せな人間、生きる力を持っている人間になってほしいと願っています。

明日は、みんなで、1番を目指します。
勝ちたい。
そうして、本気で、全力で、ゴールを目指します。

そのゴールの先に、「自分って最高!」「自分たちって最高!」「みんなと一緒って最高!」、
そうやって「幸せに生きる」ということが、待っている。
そう信じています。

さあ、明日は、そんなふうに、子どもたちを支えていただけたらと思います。
明日はついに本番。
積み重ねた思いが強ければ強いほど、「本番」というのは、子どもたちにとって特別なものとして感じられるでしょう。
きっと、子どもたちが今まで生きてきて感じたことのないような緊張、ドキドキ、プレッシャー、もしくはテンションの急上昇、そういったことを経験するでしょう。
だからこそ、なにが起こるかわかりません。
でも、なにが起こっても、今までと違う姿だとしても、どんな姿でも、子どものことを受け止め、表面上の見た目や、会の進行などより優先して、きちんと軸をずらさずに、本番も「保育」をしたいと考えています。

どうか、それをご理解いただき、あたたかい応援を、よろしくお願いいたします!

ユウシ
 

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